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思いついたときにただ色々書いています

夜【冬】

【冬】

明日は雪が降るらしいから、その夜はずっと起きていた。

深夜の二時頃、自転車を一人漕ぐ。田舎県の夜は、まるで生きているかのように静かだ。「夜」というキャラクターをしっかりと担っている。オイルの足りないタイヤが、金属音を立てながら回り、その音だけが響く。法律では禁止されているが、イヤホンを耳に突っ込み、音楽を流しながら自転車を前進させる。夜は警察だって眠る時間なんだ、それくらいいいじゃないか。見張りが少ない夜にルールなど存在しないも同然だ。深夜にこうして出歩くことも、この田舎県では禁止されているのだが、今夜はなんとなく、法律も警察も許してくれる気がしていた。耳から流れる音楽と、「夜」というキャラクターが味方して、普段の自分よりも少し強くなったように感じる。昼間、家の中にいる自分と賑やかな外が真逆になり、皆が家の中にいて、私だけ外にいることに面白い違和感を覚えながら、目的地もなく漕ぎ続ける。肌に寄り添わない冷たい風を仲間にして、立ち漕ぎなんかして、一夜を我が物に感じたあの数時間のことを、なんとなく、ずっと忘れないだろうと思った。

 


《まるで僕らはエイリアンズ 禁断の実頬張っては 月の裏を夢見て》

《君が好きだよエイリアン この星のこの僻地で 魔法をかけてみせるさ いいかい?》

流れていた音楽は 《エイリアンズ/KIRINJI》だった。

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