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思いついたときにただ色々書いています

おはぎ→はぎ

"はぎ"、と名づけたのは、我が家の先住猫5匹がきなこ、もち、ごま、ずん、つぶ(+5匹に加えてもう1匹、ひいきにしている外猫をあん)と、"おはぎ"にちなんだ名前を持っており、おはぎってただでさえバリエーションが少ないのでもうネタがなく、「じゃあもう"おはぎ"でいいか」となったことから。男の子だったし、"はぎ"と呼ぶことになった。

 

猫を飼っている方なら、首を大きく縦に振ってくれるはず。愛猫を遠くから呼ぶ時、いや、遠くでなく至近距離で呼ぶ時の方がシチュエーション的には多いかもしれない...もはや猫の名前は原型を留めないでしょう?きなこは「きなちゃん→きなち→きなぽん→きなぽ」だし、ごまは「ごまごま」とか。もちは「もっちゃん→もちん→もちまる→もったん」だったりで、ずんは「ずんずん→おずん」だったり。つぶに関しては「ちむりん」などと呼ばれているわけで。そしてその名前を発している声なんかは甲高く、赤ちゃんに話しかけるかのように甘い。

 

はぎはね、「はぎはぎ」とか「はぎくん」とか、先住猫に比べれば、あんまりクセのない呼び方をしていたと思う。それはまだ、はぎと一年しか暮らしておらず、きっとこれから「→」が続くと過信していたせい。

 

はぎは、我が家よりも適した環境で、我が家よりもたんまりの愛情を独占できるお家で飼われることになった。

 

はぎは先住猫となかなかうまくいかなくて、主に猫の面倒を見る母はすごく手を焼いていた。すぐに猫を追いかけたり、トイレを邪魔したり、寝ているところを襲ったりした。きなこはしょっちゅうシャーシャーと声をあげて威嚇していたし、ごまは膀胱炎になってしまった。はぎがこたつで寝ていると、誰もそこに入らなかった。

 

「コラ!はぎ!」と、母がよく声をあげた。

はぎはとても賢い猫なので、怒られていることは一瞬で理解できた。だけど賢い猫なので、怒られたからやめる、ではなく、怒られたら怒られてもやることができた。だから、はぎはもっと怒られた。

 

もちろん、母を含む私たち家族は、はぎを先住猫と同じくらいに愛していたし、大好きだった。ただ、ちょっと手を焼いていただけ。はぎは2022年1月4日に突然我が家に現れて、外猫のあんちゃん用にと玄関の内側に置いていた簡易ベットを横取りし、その数日後、自分で玄関の引き戸を開けて、私が眠る布団までやってきてみせた。

ちょんちょん、と小さなふわふわな物が私のおでこを叩いたので、当然猫の誰かだろうなんて目を開けたら、はぎだった。外猫のあんちゃんと同じように接していた、黒と白のハチワレの猫。「外猫が家に入ってきた!?」と驚いて、はぎを抱えて朝5時に眠る家族を叩き起こした。はぎのその、人間と人間の生活に慣れている様子と、手で叩けば人間が目を覚ますことを知っている賢さと愛らしさは、「この子を家で飼おう」という判断に迷いを与えなかった。

 

そこから一年が経過したんだと思うと、時はあまりにも早い。

 

ふかふかの布団とこたつ、人が食べている物、レーザーポインターで遊ぶこと、寝ている人の隣で眠ることが好きだった。二階で眠っていたと思ったら、トントンと軽い足音で階段を降りてきて、寝ぼけ眼で水を飲み、少し外を眺めたら、またすぐ日の当たる温かい場所で眠る。これがはぎのルーティンだった。人(猫)一倍、何をするにも音を立てたので、はぎが生活している音が、今でも鮮明に残っている。思い出しては愛おしくて、そしてまた一度でいいからそれを聞きたくて、泣きそうになる。

 

はぎの幸せのために決めたことだと、みんなで腑に落ちようとした。はぎが新しく暮らす家族からは、毎日のようにはぎが生活している様子が送られてくる。過去に保護猫を何匹も飼っていた家で今は猫を飼っておらず、「子猫は大変だから少し大人な保護猫がいれば」なんて譲渡会にも参加していたというお家だ。だから安心だし、そんなに遠い場所でもないので、希望すれば会うことだってできる。

 

だけど、ふとした時に「はぎに会いたいな」と思ってしまう。あの足音や鳴き声が聞きたい。

もっと遊んであげればよかった、もっと名前を呼んであげればよかった。そう思いながら、はぎの幸せと健康を願う。この時のこの気を忘れぬよう、ここに記録する。2023年2月14日

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