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思いついたときにただ色々書いています

Suchmos 第一幕閉幕

このなんちゃってライブレポートは、きっと長くなる。

眠れないベッドの上、暇な満員電車、腹痛で篭るトイレで、読んでもらえたら。

 

 

 

誇らしかった。横浜スタジアムまでの道のりで、"Suchmos"と刻まれたタオルを首にかけて歩くことが。「俺たちは今日、ついに夢を実現するバンドのライヴを観に行くんだ」。そんな気分で歩いた。誇らしかった。

きっとじゃない、当然俺たち以上に誇らしいのは、彼らSuchmos

”臭くて汚ねえライヴハウス”でツアーをしていた頃から掲げていた”横浜スタジアムでのワンマンライヴ”という夢を、今日9月8日に叶えられるのだから。

台風の接近で開催は危うい状態だったが、当日の朝、十分な注意を呼びかけての開催を決定した。賛否両論あったに違いないが、はっきりしたその決断に清々しさを、今日のスタジアムライヴへの強い想いを感じた。行けない人も大勢いる。その人たちの分まで、彼らが夢を叶える瞬間を目撃しよう、会場にいたファンたちはそんな熱意さえ抱いていただろう。

 

 

 

「よく来たね!!」横浜スタジアムで鳴り響いたYONCE(Vo.)の第一声。数時間後に台風が直撃しようとも、なんとかこの浜スタに辿り着いた私たちへとんでもないライヴを約束するような一言に、一気に熱狂する観客。灰色の空と大粒の雨にも負けず、"Suchmos"と刻まれた色とりどりのタオルを掲げた。

「俺らはこの横浜の地で生まれ育ったんだ」「そしてこのステージに立つことが夢だったんだ」と、観客と会場両方への挨拶代わりに、”YMM"でスタートを切る。初のスタジアムー、と言っても、先々月のサマソニではマリンスタジアム、昨年のフジロックではメインステージを担当しているわけだからー、と言っても、地元横浜スタジアムでのライヴへの思い入れは段違いだろう。漂う良い緊張感、その上で堂々としている様が、”YMM"、続く”WIPER"、Kcee(Dj.)の遊び心満載なアレンジが効いた”Alright"のサウンド感にマッチしていた。ダークでアダルティ、そして、イケナイ空気。

体調不良により活動を休止していたHSU(Ba.)のベースがリードする”DUMBO"。曲中、HSUの復活を改めて祝福する拍手が度々起こり、やっぱり彼の低音なしのSuchmosなんて考えられないななんて思っていると、すかさず「懐かしのナンバーやります」と、”Miree"のイントロが鳴った(私は個人的にこの曲が格別に好きなので、”!マーク”を3個ほど文末に添えたい)。ここ数年のライヴでは全く披露されないレアナンバーなためもあって、前後に椅子があろうとも、濡れたレインコートを身につけようとも飛び跳ねる観客たち。この巨大な浜スタで、[SOS 猿の惑星 そう 結果 We are ape]の歌詞が聴けるなんて!!!

そして、第1部を締めくくる”STAY TUNE"。死ぬほど聴いたこの曲がやはり特別に感じるのは、この横浜スタジアムの力だろうか。この曲が彼らにもたらした壮大なものを、今宵この場に集まった3万人のオーディエンスが証明している。

すでに最高潮に達しかけていたバイブスを一度冷静にさせつつも、その心中を掴んで離さない”In The Zoo"が、2部開幕の合図だ。どこを切り取っても現実を逃避させない歌詞たちに、彼らの真髄が伝わってくる。光と闇の闇の部分を見つめること、見つめたものを抉り出して提唱すること、全てに意味があるということ...etc  それからの新曲”藍情”披露、そして”OVERSTAND"は、彼らの真髄にさらなる説得力を増すものになった。<I&I あなたは私 分かりたい 分からない気持ち>、<神のみぞが知るのか?違うだろ? 人と人だけが頼りだ> かつてツアーで、YONCEが手書きしたこの曲の歌詞カードが配布されたことを思い出した。彼らが歌詞に込める思いの強さは、あの頃と全く変わらないことを知る。

続くのは、彼らのもう一つの代名詞とも言える”MINT"。OK(Dr.)の軽やかなドラムイントロは、浜スタで聴くと一段と重みが。今年の5月、YouTubeに投稿された「Suchmos "MINT" Live Edition  (https://youtu.be/qHQF3Z-BaoA )」という動画。その動画の中にYONCEが「この横浜の地で宣言しておきます。俺たちは絶対に横浜スタジアムに行く」と言うシーンがあって。既に浜スタでのライヴが決定していたから、その有言実行がとんでもなくカッコよく、心打たれた私はコメント欄にこんなことを書いた。【もうわかってる。2016年、このMINTのMVを見つけたあの夜。いてもたってもいられなくて、地元のライブハウスでライブをやるという情報を知り、チケットを取った。キャパ300人のボロいライブハウス。3m先で彼らのMINTを聴いた。そこからこの3年の間、ライブハウスのキャパも次第に大きくなり、ついにホールツアー、そしてアリーナツアーへと進化していった。ずっと彼らを追い続け、遠くなっていくなぁと幼稚なことを考えながら、欠かさずライブツアーに訪れた。その中にMINTを聴かないライブはなかった。わかってる。ずっと聴いてきたMINTを、彼らの目標であった横浜スタジアムで聴いたらどうなるか。もうわかってる。私の中でのMINT、そして彼らの中でのMINTが、横浜スタジアムで演奏された時に生まれる感情が、一体どんなものなのか。】このときに予期していた感情は見事的中した。ラストの大サビを一緒に歌うシーンは、涙が堪えきれずに歌えなかった。

「そうさ俺たちはニコチンフリーク〜 世知辛いね さみしいね どこでも吸えるわけじゃないのよ〜 だけどキースリチャードはスタジアムの通路とかで吸ってた そう一服しようよ ここらでまったり」と、お決まりのニコチン愛を嘆いた後に始まる”TOBACCO"、ニューアルバム「THE ANYMAL」から”WHY"、そして”BODY"が並ぶ。心地の良いBPMの上でTAIHEI(key.)のジャジーなピアノが遊び、横浜スタジアムがクラヴハウス状態に。Suchmos横浜スタジアムでライヴをやるということが、今の音楽シーンにとっていかに希有、レアケースであり、重要であるかを再確認した。

ここで「THE ANYMAL」から”Hit Me, Thunder"。今までのダンサブルとは違う、壮大なブルース。ローファイなサウンドに、YONCEの魂の歌声が際立つ。約8分間の物語を見たような充実感を抱いたまま、”Pacific(Blues ver.)"へ。

この”Pacific"がとんでもなかった。穏やかな波音で始まり、YONCEの伸びやかな歌声がスタジアム全体を包み終わる中盤、ステージから会場中央へと伸びるロードの先端で、TAIKING(Gu.)命懸けのギターソロが展開された。命懸けという言葉が相応しい、思いと叫びと魂が籠ったギターソロ。浜スタ上の空を強く突き破る。私はあのギターソロ、そしてあの光景を絶対に忘れることはない。

会場にいた一人一人の感情が統一され、そして揺れ動けば、涙を浮かべてしまう。だがシクシクしている暇もなく、”A.G.I.T."、”Brun"と、一気にライヴは終盤へ。

Suchmosのライヴの特徴は、バッグスクリーンに映される映像と、無数のライトアップの在り方である。Suchmosの音楽を邪魔することなく、尚且つ背景に特化することもない、絶妙な演出が超カッコいい。音楽を聴いて満足しているだけの人、本当に勿体無いぞ。

その演出が、本気を見せるのがこの第3部、いよいよ終盤である。

Kcee(DJ.)によるDJプレイがイントロを飾ると、スクリーンに「808」と移し出される。まるでその3桁が合言葉かのように、瞬間的に叫ぶ観客たち。「おかしくなろう!」という"GAGA"の合図で、バイブスは本物の最高潮に。彼らは間違いなく、信じてきたものを披露していた。そして私たちは、アーティストのライヴというものの根底を目撃した。それは台風の下で狂ったように踊っていても確信できるほど。色濃く、確かなもの。決して色褪せない、確かなもの。

会場の”ボルテージ”がMAXのまま、ラストナンバーに”VOLT-AGE"。気づけば会場は夜になり、吹く風に本格的な台風接近を感じつつも、その危うさがこの楽曲にピッタリだなんて思う。彼らが<NHK2018年サッカーテーマソング>にこの曲を発表したとき、賛否両論、様々な意見が飛び交った。しかし紅白初出場のステージ、「臭くて汚ねえライヴハウスから来ましたー」という前振りからの堂々のライヴ演奏は、”自分たちがかっこいいと思うものをやるだけ”といった、Suchmosというバンドをテーマ付ける舞台となった。賛否両論だの、メディアだの、そんなことどうだっていいのである。自分たちの信じているものを信じられれば。

そんな彼らを信じてきて正解だった。全てのセットリストが終了し、当然拍手は鳴り止まず。アンコールに、ファーストEP”Essence"から”Life Easy"。デビュー当時にリリースした”Life Easy"が彼らの初心であると考えると、今こうして1つの夢を叶えた彼らは、全く初心を忘れていないななんて思う。TAIHEIのピアノに合わせて、<Faith is the key 信じることが真実さ 誰のためでもなく 自分のために生きよう>と、伸びやかに歌うYONCE。売れれば売れるほど、時間が経てば経つほど、真髄を忘れてしまいがちだけどー。彼らしか味わないような達成感や喜びが、あの空間中に溢れ出て収まりきらず、私たち観客に伝染していたのを間違いなく感じた。音が鳴り止むと、鳴り止まない拍手に呼ばれて、自然とセンターへと集まる6人。お互いに肩を叩いたり、握手をしたり、ちょっと涙ぐむ姿もあった。そして横一列に並び。スタジアム一体を改めて見渡しながら、瞬間瞬間を噛み締めていた。

 

 

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...非常にダラダラとしたライヴレポートである。

彼らはライヴでMCの時間を設けないバンドだ。YONCE以外喋らないなんてこともザラにある。だからこの日、途中MCの時間を設けて、メンバー同士がお互いを指名しあって、全員が思い思いに喋っていたのには驚いた。

普段慣れていないのがわかる、MC慣れしていない一般人のよう。だが、そのおぼつかない言葉たちは本当にまっすぐで。お互いを”バンドの心臓”とか、”こいつがいないとこのバンドは成立しない”とか、言い合うんだ。どんなにバンドが巨大化しようとも、地元の音楽好きな友達同士に変わりはないんだなと思った。

 


........おぼつかないのはこのライヴレポートである。1曲1曲に強い個人的感情を抱きすぎて、だらしのないライヴレポートになってしまった。

ここまで読んでくれた人、本当にありがとうございます...

 

 

 

 


(※ここでいう、第1部、第2部〜などは勝手に位置付けしたもので、実際のライヴではそう仕切られてはいない)