昨年末、星野源3年ぶりとなるニューアルバム「POP VIRUS」がリリースされた。
[MUSICA]という音楽雑誌。彼が表紙の今月号に掲載されている「POP VIRUS」へのインタビュー。アルバムを既に充分聴き込んでいるつもりであったが、このインタヴューは”もっと聴き込め”と言ってきた。
「恋」「アイデア」「Family Song」のシングル曲を含め、計14曲収録。
全部とってもいい曲!と言っても薄く聞こえてしまうため、3曲抜粋してプチレビューを書きたい思う。
[肌]
キス、ハグ、セックス。それらは愛を確かめ合ったり、安心感や安堵感を求め合ったりする一貫であって、どれも肌と肌を重ねることが必要。
"肌と肌で通じ合わないとわからないもの"に感じる、究極のエロス。これは一人ではわからない、つまり、肌を重ねることを許した相手と自分自身の二人でないとわからないからこそ、究極。
<どんな近づいても 一つにはなれないから
きつく抱きしめても 二つしかなれないから 少しだけ長く>
この歌詞に、彼に愛される人はとても幸せだろうなと思ったり。当たり前を大切に歌えるのは、今は彼しかいないだろう。
[Pair Dancer]
恋ではなくて愛を歌ったラブソング。
好意を伝えること以上に、あなたが今夜もよく眠れますようにと願う、
ちょっとぬるい温度感を持った恋人同士を写したようなラブソング。
<錆びた日々の片隅で 二人きりでダンスを踊ろう
悲しい嬉しい苛だたしい 何もかも間違えて踊ろう>
「間違えないように監視するよりかは、間違えるのってしょうがないよねっていう感じの方が僕は愛を感じる」という彼の言葉に、このラブソングの全てが込められている。
だから私と私の恋人は、こんな考え方を持ってラブソングを歌う彼が大好きなのだ。
[Dead Leaf]
ドゥーワップコーラスに山下達郎。間違いなくこの曲にドラマを生み出している。
<枯れた葉>という曲名。詩を読み解いていくように、歌詞を聴いていく。
<ああ 君が 呆れるほど頭にくるほど いつでも全てに居るから これはさ 愛だ
ああ もっと似合った言葉がいいけど 一番近くて古い言葉 いつまでも落ちないな あの枝で枯れた葉>
思わずこの曲を独り占めしたくなる、プロポーズさながらのラブソング。“ああ”に人間らしさを、“これはさ“に滲み出ていく愛を感じる。特別な言葉じゃなくていいんだ。古臭くても単純でも、素直に溢れ出る言葉でいいんだ、愛を伝えるには。
彼は特別ラブソングを多く歌うアーティストではないが、今作は愛を歌う曲が多かった。ただ綺麗な愛を歌うわけではなくて、生活の中に存在する空気の中に、微かにある愛。帰ってくる家が温かかったり、眠るベッドに冷たさを感じたり、そこで生まれる輪郭のない愛。いくらポップスターであろうとも、そんなラブソングを歌う彼が、無垢な青年のようで愛らしい。このアルバムは、ファンと彼の間にさえも愛を生む、愛に溢れたアルバムだ。