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思いついたときにただ色々書いています

COVID-19 殴り書き

   怠惰な生活を送っているもんで。  

   それには理由がありまして、COVID-19という名のウイルスが、日々の生活をゆっくりと蝕んでいることに気づいたのも束の間、あっという間に占領していってしまったからで。怠惰な生活を送ること、これしか私はできないもんで。

   これは別にウイルスのせいではないけど、うつ伏せに眠ることが多くなった。 相当な肩凝りに気づいたのは、怠惰な生活の中にあるわずかな、怠惰ではない生活、「好きな音楽をBGMに好きな本 を読む」最中、ふと寝返りを打とうとした頃。例えれば、このウイルスを擬人化して、霊体化して、よいしょと肩に乗せているような、そんな凝り。今まで気づかなかったのは、ずっと苦しみの渦にいるからだろうか。

   ともかく、凝りの原因がうつ伏せに眠ることだと気づいた夜。 久々に仰向けになって眠ろうとした。目を瞑って、今日あったことを振り返る。

   今日あったこと、今日あったこと。 

   今日見つけたあのアルバム、とてもよかった。
   今日見たあの動画、久々に体が痺れた。
   今日見た野良猫、今はどうしているだろうか。
   今日会えなかった友人や恋人は、今はどうしているだろうか。

   寂しくなって、携帯画面を青光らせて、この言葉を書いている。

   SNS上にあがる言葉や写真、映像が、この世の全てを写している、自分がそんな錯覚に陥っていると気づいた時にしてようやく、鳴っていた音楽の歌詞が立体的になった。読んでいた小説の途中に挟んであった栞の無意味さ。私はその栞を挟んだ以前のページの記憶が全然ない。だからもう一度読まねばならない。私はずっと虚無の中にいた。

   その錯覚から解放されて、そうして言葉たちをすうっと吸収できるようになると、ふと過去が思い出された。 嫌な過去だ。嫌な思い出や出来事に愛想を尽かすことは到底できない。また消化することもできない。

   被害者になったことはもちろんだが、加害者になったことも強く思い出される。

   傷つけてしまった人が多く在ること。しかしもう一度はじめからやり直せたら、私は君を救えただろうか?


   爪に塗ったマニキュアの、下部にどんどん隙間が生まれていき、時間の経過を実感する。 二度塗りしたそれに、細かいラメを少々と透明のトップコート。 照らす暖色の灯りのせいで、きらきらと眩い。

   今年一月、まだウイルスの名も知らぬ頃観た「ロマンスドール」という映画。

   その映画は、”ラブドール”を主軸に進む。”ラブドール”とはラブグッズ、(想像で)セックスをする際に用いられる人形 のこと。卑猥だと思う人もいるかもしれない。もちろん映画はR12指定されていて、映画中にもラブドールはいくつも登場する。モザイク処理もされていない。高橋一生蒼井優演じる主人公たちが、このラブドールを主軸に出会い、恋 に落ち、”秘密を抱えたまま”結婚生活を繰り広げていく様が描かれた本編。

   この映画の”秘密を知った後”のラブシーンが、言葉を失うほど艶麗だった。

   肉体以前に骨さえも愛おしい、何も言わず、ただただ妻の鎖骨をなぞってゆく。互いに手を合わせて力を込めて握 り、骨と骨を絡ませる。骨の角ばったところを相手に委ねる。
   そして何よりも、骨をなぞり合う髪の毛や手、爪。 妻役の蒼井優の爪には何も塗られていなかったが、ベッドのすぐそばにある暖色の灯りが照らすそれは、きらきらと眩かった。

 

   今は、恋人の骨を触るどころか一緒の空間にもいれず、頭のおかしくなりそうな日々が続いている。

   眠れないと天井を見上げても、明日に楽しみなどはないから眠る必要もないと考えてしまうし、SNS上が世界の全て になってしまっていて、容易に怒ったり、この人サイテーだなと思ったり、笑ったりできるようになってしまった。

   かつて訪れたライブや場所、観た映画の感想なんかを書き溜めていて、それを読んだりして、嫌な過去ではなく戻りたいと焦がれる過去を召喚。好きな音楽を流して猫を撫でた後、小説を読んで眠る。これでなんとか怠惰に生きられている。

 

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