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思いついたときにただ色々書いています

ハウルの動く城

ジブリがとても好きで、「特技は『耳をすませば」の台詞を全て言えること」と小学校3年生から言い続けている。時々強く、ジブリ作品を観たくなる衝動に駆られ、夜更かしをして「ハウルの動く城」を観た。

今から14年前の2004年に公開され、興行収入196億円、「千と千尋の神隠し」に次ぐジブリ史上第2位の記録を樹立した「ハウルの動く城」。主人公ソフィーを倍賞千恵子ハウル木村拓哉荒地の魔女美輪明宏ハウルの弟子のマルクル神木隆之介が演じるなど、声優陣も豪華な作品となっている。テーマである、久石譲作曲「人生のメリーゴーランド」も誰もが1度は耳にしたことがあるだろう。

 


改めて、あらすじを書いてみる。

主人公である帽子屋の少女ソフィーは、妹の働くお店へ向かう途中、兵隊にしつこく絡まれていたところを魔法使いのハウルに助けられる。街では“ハウルに出逢ってしまうと心臓を食べられてしまう”という噂がまさに飛び交っているところだった(心臓を食べられてしまうというのは、”無意識に惹かれてしまう“ことを例えた比喩なのだが)。実際、ソフィーも一瞬にしてハウルに心を奪われてしまう。そしてこの時のハウルも、彼を狙う荒地の魔女に追われているところだった。心を奪われたソフィーはこの荒地の魔女の嫉妬によって、呪いで90歳の老婆に姿を変えられてしまう。帽子屋に居られなくなり街を出たソフィーは、荒地で不思議なカカシのカブを助け、彼に案内され、ハウルの動く城に出会う。

 


恐る恐る入った城の暖炉には、火の悪魔カルシファーがいた。彼はハウルと交わした契約によって縛られ、こき使われており、自身の魔力で城を動かしていた。彼はソフィーにハウルとの契約の謎を解いて、自由にしてほしいことを訴える。ソフィーはハウルに、城の掃除婦になることを頼み、そのまま城に居候することになった。

 


隣国との戦争が始まると、王に仕える魔法使いのマダム・サリマンがハウルに国への協力を求めてくる。マダム・サリマンはハウルの昔の師匠で、悪魔と契約を交わしたハウルが、自身の元を去ったことを惜しんでいた。一方ハウルは、「僕は臆病者なんだ。あの人の所へ行くのは怖い」と、ソフィーへ弱音を吐く。魔除けだらけの部屋で眠る弱々しいハウルの姿を見たソフィーは、ハウルの母としてマダム・サリマンに、協力の断りを申し出に行く。

サリマンは、「ハウルが協力するならば悪魔と手を切る方法を教え、協力しないならばハウルの魔力を奪う」と言う。悪魔と取引して好き勝手していた荒地の魔女も、サリマンに魔力を奪われ、元の老婆に戻ってしまう。ソフィーはハウルを弁護したが、サリマンは協力しないハウルを襲い、その後もハウルを狙い続ける。ハウルはサリマンから隠れるため、それまで住んでいた城からソフィーが住んでいた帽子屋へ魔法で引っ越しをする。老婆に戻ってしまった荒地の魔女も、家族に加わることになる。

 


街は大空襲を受け、ハウルは「ようやく守りたいものができたんだ。君だ」と言い残し、戦いに行ってしまう。ソフィーは、彼が戦うのは街に自分たちがいるからだと考え、帽子屋を出て城に戻り、それからハウルを助けに行こうとする。その時、荒地の魔女が、自身がずっと欲しがっていたハウルの心臓をカルシファーが持っていたことに気づく。彼女はカルシファーに手を触れて「熱い!熱い!」と火だるまになり、ソフィーは思わず2人に水をかけてしまった。その瞬間に、カルシファーの魔力によって支えられていた城は崩壊し、ソフィーはその残骸と共に谷底へ落ちる。谷底でソフィーは、ドアの残骸の先が別の世界と繋がっていることに気づき、その世界で子供時代のハウルを見つける。 そして、ハウルが流星を飲み込み、胸から火に包まれた心臓(カルシファー)を取り出す、”悪魔との契約“の最中を見たソフィーは、ハウルに「私はソフィー!きっと行くから、未来で待ってて!」と叫びながら、元の世界へと戻る。そしてこの時、いつの間にか彼女の姿は老婆から少女に戻っていた。

 


元の世界へと戻ると、悪魔のような姿に変わり果てたハウルが、精気を失った顔でソフィーを待っていた。ソフィーはそこで、ハウルがずっと自分を待っていてくれたのだと気づく。ソフィーが荒地の魔女から心臓を返してもらい、彼の胸に戻すと、流星に戻ったカルシファーは自由を手に入れて飛び去り、ハウルも精気を取り戻した。カルシファーの魔力によって支えられていた城の残骸さえも崩れ、再び谷底へ落ちそうになるが、突然現れたカカシのカブが身を投げ出して防ぐ。動かなくなってしまったカブに、ソフィーが感謝のキスをすると、カブはたちまち人間の姿へと戻った。彼の正体は呪いをかけられていた隣国の王子で、国に戻って戦争を終わらせようと約束する。その様子を魔法で見ていたマダム・サリマンも、「この馬鹿げた戦争を終わらせましょう」と呟く。

 


自由になったカルシファーも、「やっぱりみんなといたいんだ」と言って帰ってきた。心臓を再び取り戻したハウルも意識が戻る。星の色に染まったソフィーの髪色を見て、「綺麗だよ」と言い、ソフィーも「ハウル大好き」と告げ、抱きしめ合う。

新しくなった城でソフィーとハウルはキスを交わす。そしてハウルの動く城は、青空を飛んでいくのであった。

 


いくつか紐解いてみる。

兵隊に絡まれていたソフィーを「やあ、探したよ」と言ってハウルは助ける。これは終盤、ハウルの子供時代に行ったソフィーが、「未来で待ってて」とハウルに言い残したことの伏線となっていて、ソフィーにとっては初対面だったが、ハウルにとっては”ずっと探していた人“ということになる。

荒地の魔女の呪いによって90歳の老婆の姿にされてしまったソフィー。いち早く呪いに気づいたハウルだったが、解く方法は分からなかった。しかし、ハウルを強く思うごとにだんだんと若返っていく。作品中、ふとした瞬間に腰の曲がり具合や声、顔のシワの数などが減ったりしていくのを気づくのと同時に、ソフィーはどれだけハウルを想っているかも気づくのだ。

ハウルの子供時代は良いものではなかった。両親のことは描かれておらず、一言で言うと天涯孤独、寂しいものだった。だからこそ魔法に夢中になり、悪魔との契約へと走ったのかもしれない。この悪魔との契約というのは、流星になって地上に落ちてきた星の子を手で捕まえ(何もしなければ星の子は死んでしまう)自分の心臓を与え「ハウルが自分の心臓をカルシファーにあげる代わりに、カルシファーの魔力を使うことができる」という内容だ。

ハウルカルシファーに自分の心臓をあげたため、人間としての心を失っていることになっていて、魔力を使う度にどんどん魔王化が進み、最終的に元々あった人間性が失われる可能性があった。だから、それを恐れていたカルシファーは、ソフィーに契約の謎を解いてほしいと訴えたのだ。

「ようやく守りたいものができたんだ。君だ」と、ハウルがソフィーへ言った言葉は、そんな孤独な子供時代を過ごし、カルシファーが心配するほどの魔力の使い手になりかけていたハウルに、やっと人間味が出てきたことが分かるものだ。そして自分の心臓を取り戻し、誰かに愛され、誰かを愛すことを知ったハウルは魔力を悪用せず、城とみんなで暮らすことを選んだ。ここまでハウルが変化したのは、やはりソフィーの力だろう。実は、原作ではソフィーにも魔力があって、”命を吹き込む”という魔力を持つ。命を吹きこまれたかのように人間味を帯びたハウルだけでなく、カカシにされていたがキスによって人間に戻ったカブや、心臓をハウルに戻しても、流星になって消えることがなかったカルシファーなど、数々の周囲の人に命を吹き込んだ。劇中ではソフィーの魔力について触れられていないが、ソフィーが人間として、人々の中身を変化させていく力があることは間違いない。

 


「よくわからなかったから、もう1回内容を説明して?」という私に、母が「大人になったらわかるよ」と言った。あれから14年。私も大人になれているのだろうか。「大人になったらわかるよ」という言葉の意味がわかるようになった。最後のハウルとソフィーのキスを、照れながら観なくて済むようになった。

 

 

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